レポート | 日帰り
中山平温泉の雰囲気は、まるっきり湯治場である。自炊棟を備えた数件の温泉宿が、鄙びたたたずまいでかたまって建っている。元蛇の湯は他の旅館と同じく自炊棟を備えた温泉旅館。webで見かけた誰かのレポートでは、半露天風呂ということだったので最初から期待はあまりしていなかった。
はらはらと雪の降る中、元蛇の湯のある崖っぷちの駐車場に車を停めた。受付は玄関を入ることなく済ますことができる。小さな窓ガラス越しに入湯料を払うのだが、まるで寂れた遊園地にでも入るようであった。除雪の水が流れる坂道を歩いて行くと、やがて自炊棟の奥に露天風呂の看板が見えてきた。
露天風呂の看板は、小屋にかかっている。入り口をがらがら開けて中に入ると、薄暗く、農家の農機具を置く小屋のような感じである。もう一つ入り口をがらがら開けると、そこが脱衣所であった。浴室との仕切りもない。で、浴室を見ると、一角がガラス張りなだけで、まるっきり室内ではないか。がっかりである。帰り際に露天風呂の看板に向かって、どこが露天風呂じゃ!とツッコミを入れたのは私だけではあるまい。
気を取り直し、服を脱いで浴室に行った。黄色い洗面器が置いてある。見ると、「ケロリン」と書いてある。おお!気に入った! 滑川温泉以来である。昨今の小洒落た温泉が多い中、ケロリンに巡り合うことは意外に難しいのだ。うきうきして、いつもより多く掛け湯をしてしまう私であった。
お湯に入ると、じんじん痺れるほど熱い。しかし、我慢して肩まで入ると、すぐに慣れた。びりびりと湯が身体に染み込むようである。すくってみると、とろーっとしている。ぬるぬるしているのだ。肌が湯に反応して、ざわざわと鳥肌が立った。おお、なんか、いい湯だ。湯の成分が毛穴から入り込んでくるような感覚があった。久々に思わぬめっけもんである。露天風呂でないにも係わらず、とても満足することができた元蛇の湯だった。
※福祉法人宮城福祉会に移譲されました。