レポート | 日帰り
八ヶ岳連峰の東面、標高2,150mの高みに存在する日本最高所の野天風呂が、本沢温泉の「雲上の湯」。歩いてしか行けない山岳温泉(しかも露天風呂)としては珍しく通年営業している。ちなみに白馬鑓温泉は標高2,100m。高天原温泉は2,060m。
【ルート】
本沢温泉へのアクセスは徒歩1時間〜3時間。オフロード四駆であれば本沢ゲートまで乗り入れできるので徒歩1時間だが、普通車は本沢入口までとなり徒歩2時間弱かかる。冬季は積雪量によるが、除雪されないため場合によってはオフロード四駆でも本沢林道入口までとなり、徒歩3時間以上必至。
本沢入口から本沢温泉までは、全行程が樹林帯の中の単調な歩きとなる。本沢ゲートからは雪が積もっていたが、アイゼンが必要なほどの傾斜はなく、雪山装備の出番はない。1月〜3月、積雪が多くなったら、アイゼンよりもワカンかスノーシューが欲しくなりそうだ。八ヶ岳では3月上旬頃が最も積雪が多くなる。
12月の今、積雪は少なくても気温は低いため、3m程の長さで完全に凍っていた場所(道幅いっぱいの水溜まりが凍ってつるつる)もあったが、ここも傾斜は緩く、雪慣れしている人なら問題になるほどではない。雪国生まれでないツレは、手前で注意したにもかかわらず漫然と歩いてコケそうになっていたが。
今回は最も短時間で行けるコースを使ったが、その単調さには辟易した。実は本沢ゲートまで行けるかもと車を突っ込んでみたのだが、道の抉れが大きくてすぐ諦めた。フロントバンパー下をばりばり擦るし、下手すりゃ亀の子スタックでいい迷惑。無理はしない方がいい。なので2時間、途中に開けた場所もなく全て同じような景色の中を歩く。特に帰りは実際の時間よりものすごく長く感じた。
時間はかかるが、稲子湯からしらびそ小屋経由で歩く方が楽しそうな気がする。帰りの行程は、積雪期なら山スキーで滑り降りたくなるかも。行きは稲子湯からしらびそ経由(どうせ積雪が多ければ車は稲子湯下の本沢林道入口までしか行けないし)、本沢で一泊、翌日は夏沢峠往復でスノートレッキングを楽しみ、帰りに本沢入口まで山スキー。これって、なかなか面白そうじゃない?
【混浴露天風呂「雲上の湯」】
硫黄岳爆裂火口の荒涼とした景色の中に、白い湯を溢れさせた本沢温泉の湯船がある。湯船は正直言って狭い。同時に何人もは入れないだろう。登山シーズンの休日ともなれば、入浴待ちの列ができるそうだ。そこで、まあアホだとは思ったが、わざわざ12月を狙ったんである。途中の標高1,000m地点での気温は零度だったので、雲上の湯ではだいたいマイナス6度程度と考えられる。まだどうってことはない気温だが、厳冬期はマイナス10度以下を覚悟した方がいい。
本沢温泉に到着する頃、結構激しく雪が降ってきた。しかも風が強い。脱衣所なんて気の利いたものは無く、雪の上に直接脱いだ服を置く。横殴りに吹きつける雪が容赦なく身体を叩き、体感温度を下げる。湯船まで裸足で踏みしめる雪が冷たく痛みを覚えるほど。久々にひ〜!と叫びながら湯船に走った。まあ正直なとこ、風呂入るってレベルじゃねーぞ!
白濁した湯は、まあ入れないほどではないが、かなりぬるい。それでも湯の中は天国のようだ。じっと浸かっていると頭に雪が積もってくるのが情けなかったが…。硫黄岳を背に雄大な景色を楽しむはずが、肝心の硫黄岳はガスの中。風で何度も脱いだ服が飛ばされそうになり、慌てて湯船から飛び出て服を押さえに行くのもまた、情けなく辛かった。
入浴を終えて湯から上がる時は、まず上半身だけタオルで拭いて、腰から下を湯に浸けたまま上だけ服を着る。その後思い切って湯から出て下を穿く。とても他人には見せられない、あまりにも間抜けで恥ずかしい姿。誰もいなくて良かった。
残念だったのは、せっかくここまで来ておきながら、寒さでカメラの電池がすぐ弱ってしまった上、予備の電池を忘れてきたことだ。あまり写真が撮れなかった…。
利用登山口P:本沢入口::359 395 421*20