レポート | 日帰り
四万温泉には創業数百年の宿がいくつも残っているが、四万たむらはその中でも特に古く、創業より500年の長きに渡る歴史を誇る。さらに「たむらの森」と名付けた10万坪の広大な土地を所有しており、系列の四万グランドホテルと合わせて四万温泉では最大規模の宿となる。
積善館を左に見て坂を上ると、入母屋造りの茅葺屋根が出迎えてくれる。そこが四万たむらの玄関。天保5年に建替えられた四万たむらのシンボルだそうだが、古さを感じるどころかモダンにさえ見えてしまうのは不思議だ。積善館の「元禄の湯」よりも100年近くも古い筈なのに、全くそうは思えないのは、細かな補修を積み重ねた維持努力の賜物なのだろうか。
【浴室施設】
歴史が古いわりに四万たむらは湯治場の雰囲気は残さず、現代的で誰にも利用しやすい宿となっている。貸切風呂を含めて八箇所の浴場があり、系列の四万グランドホテルにある二箇所を合わせて10箇所もの温泉を楽しむことが可能。但し、日帰り入浴では四万たむらで受付した場合には四万グランドホテルにも入浴できるが、四万グランドホテルで受付した場合には四万たむらには入浴できないそうだ。
そんな多くの浴場の中で混浴はただひとつ、四万たむらにある「竜宮」と名付けられた露天風呂。川原に造られており、川の水かさが増すと水に沈んでしまうことから、幻の湯とも呼ばれている。
【混浴露天風呂】
「竜宮」へはロビーよりエレベーターで「川3階」まで下り、まずはプールへ出て湯けむりサロンの外側を回り込むと湯槽が開けっ広げに目に入ってくる。開放的ではあるが、丸見え感もかなりのもの。夏であればプールから直接水着のまま利用できると謳ってあるので、その季節の休日にはとても裸では入れない雰囲気になりそうだ。
フロントで寒いかもしれないとさんざん念を押されたが、水着で入るんじゃそれはもう風呂じゃねえと感じる自分としては夏なんかに来なくてよかったと思う。
混浴露天風呂があるのはちょうど大浴場「甍の湯」の窓の真っ正面。男性浴場が1階で女性浴場が2階にあるので、ちょうど男性浴場の目の前にあることになる。とはいっても、背丈近い段差の下だし目隠しの衝立も設置されているから、おそらく男性浴場の中から湯槽は見えないと思う。2階にある女性浴場からはよく見えそうではあるけど。
その段差を階段で下りた場所に棚がありそこが脱衣場所となっている。ふたつの湯槽がその脱衣所を真ん中に挟み込んで並んである。寒いかもとあれだけ念を押されたわりには、ぬるくもなく熱過ぎもせず適温の湯が満たされていた。
目の前には四万川支流の川原。湯槽に浸かるとほぼ目の高さに川原がある。一方だけとはいえそびえ立つ衝立が迫ってくる感じで、開けた川原にありながらどど〜んと広がるような雄大な開放感は感じられない。しかし衝立がないと誰かに見られそうで落ち着けなくなりそうだし、これは仕方ないだろうと思う。差し引いてもそこそこの開放感は味わえる。
白く泡立ちながら堰堤を滑り落ちる川の水音が心地よい。森の中の露天風呂というのも悪くないもんだが、やはり渓流沿いの露天風呂が最も露天風呂らしさを感じられて好きだな〜と思う。
【湯めぐりスタンプ】
日帰り入浴でも「想い出づくり湯めぐりの旅」と題されたスタンプ帳を貰った。十一番まであるスタンプでページを埋めていくようになっている。
それぞれの浴場にはスタンプ台が置かれ、そこでそれぞれのスタンプを押して埋める。全部埋めたからって何か特典があるわけでもないようだが、スタンプラリーとか好きな人はコンプリートを目指してみてもいいかも。子供なんかは喜んでスタンプ集めに駆け回りそう。