レポート | 日帰り
積善館は元禄4年から300年以上続く旅籠で、現存する日本最古の温泉建築宿と言われ、ジブリ映画「千と千尋の神隠し」のモデルにもなっているそうだ。国の登録文化財にも指定されている「元禄の湯」があまりにも有名。
大正ロマネスクを表現する手法でデザインされた浴室は、わくわくするほど郷愁に満ちあふれ、そして今でもそこに入浴できるというのがすごい。混浴ではないのだけれど、入浴せずに素通りなんてとてもできるもんじゃない。
その有名な「元禄の湯」に隠れて目立たないが、積善館には湯治宿の名残を感じる混浴の浴場もしっかり残されている。このサイト的にはもちろんそちらが主目的。
日帰り入浴は帳場の横にある自動販売機で入浴券を購入する仕組み。一人1,000円と少々高めの値段とは思うが、「元禄の湯」と混浴の「岩風呂」両方に入浴することができる。
日帰り入浴の開始10:00きっかりに行ったのだが、混浴の「岩風呂」は清掃の都合なのか10:30から入浴可能とのことだった。丁度良いのでまずは「元禄の湯」に向かう。
【元禄の湯】
積善館の玄関を入ってすぐ、帳場に向かって右側の扉を出ると「元禄の湯」の浴舎がある。男女離れて並ぶ扉に暖簾がかかるが、観音開きの扉を開けると何も遮る物もなくいきなりどどーんと浴室が目の前に広がる。脱衣場は浴室内の一角に棚があるだけのもの。
実は、誰も入浴者がいないことを確認して写真をパチリと撮影、さて着替えようと振り返ると壁に撮影禁止と貼ってあった。なんでも入浴中に写真を撮られたとの苦情が結構あるそうで、撮影禁止の措置になったようだ。この建築物を前にしたら写真を撮りたくなるのは誰でもそうだろうけど、他に入浴者がいる時は当たり前にまずい。撮影禁止とあったからには撮ってしまったその写真をサイトに載せることはできないが、積善館の公式サイトにある写真そのままのノスタルジックな浴室だったことには間違いない。
ただ、扉の心許なさ感と、薄い壁を隔てた向こう側から筒抜けに聞こえる観光客の話し声とで、落ち着ける空間ではなかったのがイマイチ。日帰りより宿泊で来る方が良いと思った。
【混浴岩風呂】
「元禄の湯」を早々に切り上げて混浴の「岩風呂」に向かう。帳場に向かって右側の階段を上がり、廊下を渡った向こう側に「岩風呂」がある。こちらに入ろうという人は少ないのか、向かうところから静かなものだ。
廊下の端の階段を下りると男女別の暖簾がかかった脱衣所がある。男女別の狭い脱衣所を抜けて扉を出ると混浴の浴室。脱衣所は浴室の床面より高い位置にあって、脱衣所を出るとすぐ数段の階段を下りる形となる。つまり入浴者から見たらまるでお立ち台への登場のようで、女性は無防備にならないよう注意した方が良いだろう。
脱衣所の浴室側出入口は半透明の磨ガラスになっていて、新しい入浴者が来れば先客にわかる。女性の登場は注目を浴びそうだが、逆に後から男性が来たとしてもわかるので出るなりガードするなり準備もできる。
「岩風呂」の浴室はそこそこ広さもあるのだが、「元禄の湯」の後では狭く感じてしまうし、雰囲気も平凡にしか感じなくなってしまうので、印象が薄くなってしまう。それゆえか入浴者も少ないようなので、女性が入れるタイミングは多そうな感じ。
確かに積善館の中で「元禄の湯」を前に霞んでしまうのは否めないが、湯治場を思わせる趣もあるし、なにより「元禄の湯」よりずっと落ち着ける空間だった。混浴好きはもちろん、温泉好きだってやはりこちらも外せないだろう。
※混浴岩風呂はなくなりました。