レポート | 日帰り
塩釜温泉には国道400号沿いに箒川を跨いで7軒の旅館がある。ホテル八峰苑は甘湯沢が箒川に流れ込む合流地点に建ち、独自源泉を持つ宿である。その湯は温泉通の間でも評価が高いようだ。八峰苑に混浴はないが、貸切の内湯と貸切露天風呂がある。
八峰苑は国道400号からは箒川を挟んで対岸にあるのでなにげなく見逃してしまいそうだが、少し注意してみるとその押し出しの強い建物は嫌でも目に付く。こういう表現をするとまた宿の人に怒られてしまうかもしれないが、なんとも「廃」なテイスト。鄙びとは違う、うらぶれたと言った方が相応しい。こーゆーの好きだ。最近人気のモダン和風な演出された鄙びとは一線を画す。温泉といえば飾り気のない素朴が一番いい。
【日帰り入浴】
どきどきわくわくしながら玄関に行き扉を開けようとしたら、無情にも扉にはがっちりと鍵がかかっている。日帰り入浴が可能かちょっと自信がないまま来たのだが、やっぱりか。
仕方がないので位置情報だけでも計測しておこうと宿の前でGPSをかざしたのだが、衛星は四つ捕まえていながら何故かなかなかネゴシエーションが終わらず、もたもたしているうちにそれを見つけた宿の人が出てきてくれた。そして日帰り入浴のOKをいただく。
本来日帰り入浴時間は14時か15時くらいからだったようで、事前によく確認しておかなかった自分が悪い。ご主人のご好意に感謝。ちなみに、まず「パスポート?」と聞かれたのだが、自遊人5月号の温泉パスポートを使えば無料で入浴できるらしい。但し、パスポート利用の場合は貸切には入浴できない。
【貸切風呂】
八峰苑の貸切は、空いていれば自由に入浴できるシステム。内湯のあるフロア奥のやけに狭いドアを開けて外に出ると宿の外壁に沿って階段があり、降りて突き当たり甘湯沢沿いに貸切露天風呂が現れる。旅館の外観からは想像できない、なかなかの風情。まさかこんな露天風呂が隠されているとは思ってもなかった。
うっすら青銅色に濁った湯は、表面張力が高そうな粘りを感じる見た目だが、実際の感触はさらっとしている。加温加水しない源泉そのままを厳守しているため、自家源泉と塩釜温泉からの配湯を、天候や季節によってその日ごとに配合を変えているそうだ。
日帰りの短時間なんかじゃなく、泊まりでじっくりと入浴したいと思った。このロケーションとこの湯だったら、もっと商売っ気を出して流行の和風モダンに改築すれば、かなり人気が出るのではないかと思える。だけど自分としては今のままの方がいいなぁ。
【余談】
帰り際、宿の人の姿が見えなかったので、奥に向かって「ありがとうございました!」と声をかけたが、聞こえたかわからない。このレポートを書くために帰ってから色々調べ直したりしたのだが、その中に自遊人のサイトがあった。で、そこに「いいお湯でした、ありがとう」カードというものがPDFでダウンロードできるようになっていた。実際、帰りに声をかけ損ねる状況は頻繁にあるので、これはなかなか良いアイディアだと思う。
※現在休業中のようです。