レポート | 宿泊
新穂高温泉の中尾地区にあるのが中尾温泉だが、中尾温泉は独立した温泉地として名前が出ることは少なく、ひと括りに新穂高温泉となっていることが多い。市町村の統廃合によって平湯温泉方面までを含めた奥飛騨温泉郷の名が一般的になってきている昨今、蒲田川沿いから中尾地区まで含めた温泉地を奥飛騨温泉郷新穂高温泉と呼び、中尾温泉の名称はますます影が薄くなっていってるように感じる。
蒲田川沿いの大きな旅館と違い中尾地区にあるのは民宿が中心だ。民宿でありながら混浴を持つ宿も多く、なかしま旅館もそういった民宿のひとつ。以前は日帰り入浴も受け付けていたが、経営が若夫婦に世代交代したことを機に日帰り温泉をやめてしまい、現在は宿泊しないと入浴できない。
余談だが、温泉ブームで一時期増え続けた日帰り入浴も、この頃はやめてしまう宿が増えてきているように感じる。特に混浴を持つ宿では今後この傾向が加速するのではないかと危惧している。
実はなかしま旅館の前に山荘錫杖に予約の電話をしたのだが、そちらは満室で宿泊できなかった。逆になかしま旅館はなんと我々ひと組だけ。登山シーズンが開幕したこともあって、恐らく山荘錫杖の方は団体の予約が入ったのだろうと思う。まあおかげで旅館丸ごと貸切という贅沢な一泊となったから、それはそれで良かった。
【混浴露天風呂と貸切風呂】
なかしま旅館には貸切風呂がふたつと、大きな混浴露天風呂がひとつある。混浴露天風呂は湯船が瓢箪型に中央で狭くなっており、仕切りが目隠しとなって女性でも入り易い構造。脱衣所も男女別に用意されている。それゆえ混雑時には完全に男女が分かれてしまうだろうから、混浴が目当てなら閑散期を狙いたい。
運良く完全貸切となった我々は、森に囲まれた静かな露天風呂を、大きな湯船の端から端までゆっくり堪能できた。もし運悪く混浴が混んでいたとしても、貸切風呂に逃げることもできるのはありがたい。貸切風呂のうちひとつは露天風呂で、ウッドデッキに作られた木の湯船は小さいながらも二人で静かに過ごすには最適だろう。
【居心地の良い旅館】
夕食時、小さな姉弟が挨拶に来た。さすが旅館の子供で人見知りとは縁がない。お客さんが来るのが楽しくてしょうがないといった様子だ。子供が一緒の家族旅行だったら、いい遊び友達になることだろう。
夕食後、蛍が見頃ということで行ってみた。子供の頃に遊んだ事のあるような小川にいくつもの淡い光がふわふわと漂い、懐かしいような郷愁にどっぷり浸る。真夏の夜の情緒もいいもんだ。
なかしま旅館の客室がある二階の廊下の端には大量の漫画本がストックしてあり、旅館に戻ってからはついDr.コトー診療所を読みふけってしまった。まるで田舎の親戚の家に遊びに来たような、居心地の良い一泊であった。