レポート | 日帰り
トロッコ電車は宇奈月駅を出発して、黒薙駅、鐘釣駅、終点の欅平駅の順に停車する。実際は関係者用の駅が他にいくつか存在するが、観光客が降りることができるのはこの四つだけ。宇奈月駅からひとつ目の黒薙駅で下車し徒歩20分ほどの山奥に黒薙温泉がある。宇奈月温泉の源泉はここから引いている。
【トロッコ電車で黒薙へ】
黒薙駅は鐘釣駅に比べて小さく、売店などいっさい何もない。自動販売機すらない。また、4月と11月下旬の便数が減る時期以外は黒薙駅を通過してしまう便も多いので、切符を買う時に確認が必要。
ちなみにトロッコ電車の切符は指定席というわけではないが時間指定券となる。鐘釣と黒薙の両方に寄りたい場合、片道切符で行くと混雑期には帰りの切符が手に入らないという事態も起こり得る。なお、鐘釣駅では切符を売っているが黒薙駅には無く、乗車証明券を貰って宇奈月駅で支払うことになる。
【黒薙駅から黒薙温泉への道】
黒薙駅から黒薙温泉までの道はふたつある。ひとつはホームの向かいから階段を登って山を越えるコース。もうひとつは廃線トンネルの中から黒薙温泉まで通じるトンネルを通るコース。山越えは約20分、トンネルは約10分かかる。
普通は山越えコースを行くことになる。トンネルコースは無断立ち入り禁止なので、何か不都合があって山越えコースがとれない場合には駅員に断ってから利用すること。今回は天気も良いし身体に不具合もないので山越えコースを選んだ。
【旅館黒薙温泉】
ひと山越えると黒薙温泉が現れる。周りを全て急峻な山に囲まれ、峡谷の底にぽつんとひとつだけある一軒宿だ。ホントに周りは山以外何もない。日帰り入浴は500円。
缶ジュースの自動販売機があるので、水筒を持たなかった場合にも旅館まで来れば手に入る。山の自販機の常で少し高めの値段設定だが。この日は陽射しが強く入浴後にかなり咽が渇いたので三本も飲んでしまった。ついでについ温泉卵も頼んだりして、なにせ宇奈月に帰るまで何も手に入らないから日帰り入浴客相手でも結構いい商売になりそうだ。
【大露天風呂】
黒薙温泉の露天風呂は宿から川沿いに少し離れた場所にある。山奥だから野性的な露天風呂を想像していたが、広い範囲がコンクリで整地され、ひらけて明るく開放的な露天風呂だった。
湯船はかなり大きい。奥飛騨の佳留萱山荘や穂高荘と比べたらやや小さいが、それに匹敵する大きさだ。この大きさでも湯温は熱め。宇奈月温泉に配湯していることからも、湯量はかなり豊富なのだろう。
露天風呂の手前では源泉の工事なのか数人が何かしている。開放的な露天風呂なので丸見えかなと思ったが、湯船の縁が結構背が高いので全く気にならなかった。その分、川沿いにあっても川を眺めながらの入浴とはいかないが、目の前に迫る深緑の峡谷を眺めながらでもなかなかの風情。まだ紅葉には早かったが、紅葉の時季には美しい景色が目の前に展開しそうだ。