レポート | 日帰り
志賀高原の南、松川渓谷の最奥部、笠ヶ岳と黒湯山にはさまれた紅葉の美しい渓谷にひっそりとあるのが七味温泉。七つの源泉があったことから、七味の名が付いたという。
七味温泉の宿は二軒、紅葉館と渓山亭がある。もう一軒ある山王荘は、現在宿泊はやってなく日帰り入浴専門施設となっている。紅葉館と渓山亭も日帰り入浴できるが、渓山亭の場合は徒歩5分程度離れた場所にある風呂だけの別館のような「恵の湯」が、ほぼ日帰り入浴施設のような役割になっている。
【信州高山温泉郷】
千曲川の支流松川沿いにある子安温泉から七味温泉までに加えて、笠ヶ岳方面に上がった山田牧場を含めた温泉郷を信州高山温泉郷という。
この辺りの紅葉は信州随一と言われるだけあって、10月下旬のこの日は平日にもかかわらず、続々と観光バスがやって来てかなりの人出。山田温泉下流では、紅葉の渓谷に架かる鮮やかな赤色の橋を写真に収めようと、道端にずらりと三脚が並ぶ。雷滝の入口はガードマンによる交通整理が行われているほど、駐車場は満車の状態。そもそも擦れ違いに気を使う狭くくねった道路にはみ出して歩く人が危なっかしい。
志賀・万座から須坂に抜けるこのルートは昔から好きで、結構何度も来ているのだが、もしかして紅葉シーズンはたまたま外していたのか、この人の多さには驚いた。
【恵の湯】
松川渓谷を遡り五色温泉を過ぎてから県道を右に逸れた先に七味温泉がある。松川に架かる橋を渡った先に宿があるが、恵の湯へは橋を渡らずに右に行く。観光バスも止まれる大きな駐車スペースがあるのが恵の湯だから、行けばすぐわかる。
受付のある棟は団体の食事の予約が入っていたようで、ばたばたと忙しそうだった。10時ちょっと過ぎに到着して受け付けの人に聞いたら、この日は風が強い為に露天風呂の温度が上がらず、貸切風呂は休業しよう考えていたらしい。危うく無駄足を踏むところだったが、午後になればなんとか入れる温度になるんじゃないかなということで、午後また出直すことにした。
【日帰り入浴料】
恵の湯には男女別の内湯・露天風呂と、大きさの違う中小2箇所の貸切露天風呂がある。入浴料は600円。貸切風呂は入浴料に加えて、小が1,000円、中が1,500円。
この日は前述のように風呂の温度が上がらなかったため、選ぶ余地なく小さい方になったので、二人で合計2,200円となった。
【貸切野天風呂せせらぎの湯(小)】
恵の湯の風呂は向かって右側から男湯、女湯、貸切野天せせらぎの湯(中)、そして一番左側に貸切野天せせらぎの湯(小)と並ぶ。せせらぎの湯にトイレは付いてないので、受付の棟か男女別の風呂で済ませておく。
せせらぎの湯(小)には、ちょっとした休憩もできそうな、ゴザの敷かれた脱衣室と、その奥に内湯代わりなのかシャワー室が設けられていた。シャンプー・リンスも備わっているので、ここで体を洗うこともできる。
露天風呂は「小」と言う割には、全然小さいとは思えない。自分的には控えめでも「中」と言っても差し支えない大きさ。GoogleMapの航空写真で見てみると良くわかるが、男湯の露天風呂がせせらぎの湯(中)の三倍以上はありそうな大きさなので、その比較で「中」と「小」になったのだと思う。
白濁した湯は確かに若干ぬるめであったが、逆にぬる湯の方が好きな自分には入り易かった。それでもやはり湯から出ると肌寒く、風がない日のこの季節だったらベストコンディションだったかと思う。しかも目の前は紅葉だし、そりゃ観光バスで来るのも頷ける。
入浴前に注意は受けていたが、渓山亭の自家源泉は他の宿と違って鉄分を多く含んでいるため、湯船の底や石に触れた箇所が黒くなるそうで、その通り墨を擦り付けたように足の裏や尻が黒くなった。但し、この黒ずみは乾燥すれば消えるのだそうで、確かに手の平に付いてしまった黒ずみは、湯から上がって暫くしたら消えていた。
恵の湯に入浴後、服に染みついた硫黄臭はなかなかのもので、数回洗濯してもまだほのかに香るほど。温泉好きには心地よい匂いだが、しかし一緒に洗濯した他の洗濯物にまで被害が拡大するのは、やっぱり困りものでもある。
※七味温泉ホテル渓山亭の閉館に伴い2021年1月4日にて閉鎖されました。