レポート | 日帰り
まさにスキー場のロッジのような建物が松屋ホテル。湯の花旅館のすぐ手前にあり、同じくスキー場のゲレンデの中に存在する旅館。
松屋ホテルの玄関を入るとフロントカウンターの半分は靴のまま用事を済ませられるようになっており、さらに左側は靴を脱がなくて良い食堂がある。おそらくスキーシーズンには食堂を営業できるようスキーブーツのまま入れる造りと思われる。しかし2012-13シーズンの万座温泉スキー場ゲレンデマップを見ると、松屋ホテルと湯の花旅館のある朝日山エリアの営業は休止となっていたので、今も食堂の営業をしているのかはわからない。
【松屋ホテルの浴室】
松屋ホテルには男女別の内湯に加え、貸切の内湯が二箇所ある。露天風呂は無い。貸切風呂は夏期のみ利用可能。
ホテルに着いて貸切入浴をお願いすると、案内された浴室はロッジのような外観からは想像できない、遥か昔の湯治場に迷い込んでしまったような、脱衣所から浴室まで全て木で造られた古めかしいもの。いくら昔のままの建物でも窓だけはサッシに変わっていることが多いものだが、ここは窓の枠まで木製で、何十年も前から時間が止まってしまっているよう。さすがに本当にタイムスリップしたわけではないので時間は確実にあちこちを侵食し、歪みのせいで窓がきっちり閉まらず隙間ができてしまっている。
【貸切風呂】
脱衣所入口にはフック状の留め具があって、一応これが鍵の変わりになる。力を入れて引き開けたら吹っ飛んでしまいそうではあるけど。
浴室の床は板が放射状に湯槽を囲んだ、ノスタルジーを感じる造り。ケロリンの洗面器やシャンプーは置いてあるが、カランは無い。硫黄臭ぷんぷんの万座の湯で頭を流さなきゃいけないのかな? 本来は湯治として浸かることだけが目的に造られている感じ。
最初、葱色の透明に近い濁り湯だったのだが、先に入ろうとしたツレがわさわさと掻き混ぜて泥のように濁らせてしまった。なんでわざわざ濁らせるんだよ〜と聞いたら、底がぬるっとして気持ち悪いんだそうだ。それは湯華なんだろうから親の敵のように掻き混ぜなくてもいいだろうと不満に思いながら自分も入ってみたら、にゅる〜っと泥を踏むような感触。透明度ゼロにまで掻き混ぜてもなお、おそらく5cm以上の厚みで堆積物が積もっている。想像を遥かに超えた量だった。まるで野湯。でも全て湯華だから、身体に塗れば効果がありそうな気はする。湯の温度は熱くなく入り易い。
スキーブーム華やかなりし頃、松屋ホテルもさぞ賑わっただろうと思う。その時から設備も更新されず、そのまま時が凍結してしまった感じ。古いものが好きな人間は思わずにやりとしてしまうが、一般的には時代に取り残された感は否めない。多かれ少なかれ万座の他の旅館にはぱらぱらと入浴客をみかけたが、一人もいなかったのは松屋ホテルだけ。もっと温泉好きが来ても良さそうな気がするが、このままの形で生き残れるのか心配になってしまった。