レポート | 日帰り
老沢温泉旅館は中の湯旅館や旅館滝の湯がある滝谷川沿いのエリアからは少し離れ、滝谷川に注ぎ込む支流の沢上流にある。地図上ではこの沢の名前を確認することが出来ないが、旅館の名前からして老沢という沢なのかもしれない。
なお、老沢温泉旅館を過ぎて道を進むと再び滝谷川の上流に近付き、鄙びた風情の温泉地には珍しい日帰り温泉施設のせいざん荘がある。共同湯とは違い休憩室や食堂まで備えた立派な入浴施設なのだが、なんと入浴料310円というお手ごろ価格。
老沢温泉旅館は、窓はサッシじゃない木の枠だし、玄関の引き戸はかなり年季の入ってそうな木製なのに、塗り壁は真っ白で妙に新しい。コンクリの打ちっぱなしが露出した部分も古くはなさそうだ。古いものと新しいものが入り混じり混沌とした不思議な印象がある。
屋根はこの辺りでは共通の、若干傾斜がきつめで雪止めが付いていない構造。豪雪の白川郷のような急傾斜とは違うが、雪が自然に滑り落ちるようになっていて、なんとなく雪質や積雪量が想像できる。温泉の話から逸れまくってしまうのでこの辺でやめるが、建物の構造を見るとその地方の気候だとか特色が垣間見えて面白い。旅行の楽しさってのはそんな所にもあるものだ。
旅館に入り浴室に向かうとまず2階分くらいの高さがある階段を下りる。階段の壁にはびっしりとカレンダーが並んで貼り付けられており、なぜにこんなにカレンダーが必要なのかと訝しく感じる。階段を下りるとそこが扉も何もない脱衣所。壁に棚が9×2の18人分。浴室は大きいが湯船はさほどじゃないので18人も入れるんかいな?
【不思議な雰囲気の浴室】
浴室には2〜3人が入れる程度の湯船が三つ並んでいる。独特なのは浴室の奥、ガラスサッシの向こう側に垂れ幕が下がり、老沢温泉神社と書かれている。どうやらご神体が収められているらしい。垂れ幕のひとつには奉納者だろうか、「完熟トマト二輪クラブ老沢愛好者」の文字。なんともちぐはぐな言葉の羅列だが、まあ浴室内に神社を入れる違和感に比べれば可愛いものか。
外に面して大きなガラス戸になっているので、浴室の広さと合わせて閉塞感は感じられない。夏なら戸を開け放てば涼しい風が入りそうだ。
湯は端の湯船から順々に注ぎ込まれているので熱さが違うかと思えば、この日は全て若干熱めのほぼ同じ温度だった。おかげで全ての湯船に浸かることが出来たが、日によっては状況が違うかもしれない。うっすら濁った湯で、他に入った西山温泉のどれより一番濁りが強い。
湯から上がって上に戻ると、次の入浴客が居間で待っていた。混浴のつもりで入っていたが、どうやら貸切にしてくれていたらしい。外に出ると車が一台増えていた。車のナンバーは北陸地方(新潟を含まない北陸三県)。遠くから来てるな〜と思ったが、でも福島とはいえここはもう日本海に近い方なわけで、考えてみれば東京からより少し遠い程度か。