レポート | 日帰り
色々な地方に行っていると、それぞれの県ごとに町並みの特徴があることに気付く。平家落人が拓いたこの秋山郷は、長野県でありながら実質、新潟県側にしか入口を持たない山里である。そのためか、長野県側に入ったにも係わらず、建物や景色は新潟県独特の雰囲気を感じる。
【秋山郷への道】
和山温泉は、秋山郷最奥の切明温泉よりひとつ手前にある温泉。曲がりくねった山道を、どこまで行けば辿り着くんだと不安になるほど進むと、やがてぽつぽつと現れる民家を過ぎ、さらに進んでやっと辿り着く。
仁成館の外観はただの農家のようであるが、皇室の誰だかが泊まったと書かれた看板が立っていた。
【混浴露天風呂】
入浴料は700円と、少し高め。泊まればいかにも家庭的なもてなしなんだろうなと思わせる館内を突っ切り、露天風呂に向かう。脱衣所は館内を出てすぐにある。男女別に分かれており、女性側には扉もある。湯船は脱衣所を出てすぐ、真ん中に岩の仕切で二槽に分かれている。手前の半分までは屋根も掛かっており、雨の日でも濡れずに入浴が可能だ。
露天風呂の正面に、まだ雪の残る山並みを眺める。屋根のせいで開放感は今ひとつだが、露天風呂の遥か下に蛇行している緑色の中津川の眺めを楽しめた。
正面に望むのは鳥甲山。長野県側とはこの深い山に阻まれ、反対の新潟群馬県側とは苗場山に阻まれ陸の孤島と化したこの山地に、恐らく何人も途中で命を落としながらやっと辿り着き里を拓いた落人達の苦労に思いを駆せながら、霧に沈む山並みと一緒に湯に沈み瞼を閉じる。霧のような雨が静かに顔をなで続けた。
※2006年1月、豪雪の影響で屋根のひさしが折れたり窓ガラスが粉々に割れてしまったそうです。修繕費の捻出に問題があり、営業再開の目処どころか廃業の可能性もあるとのこと。
※宿泊はできませんが、現在は風呂のみ利用できるようです。
※2019年9月末で完全に廃業したそうです。