レポート | 日帰り
湯川温泉は錦州湖に注ぐ源流の一本である湯川沿いにある、古くから湯治場として栄えた温泉。下流から上流に向かって出途の湯、中の湯、奥の湯の三種類の源泉が湧く。
ほっとゆだ駅を上流に向かって進むと、旅館が点在する二車線の道路を過ぎ、一車線の道幅の狭い道路のエリアに入ると大扇別館がある。奥の湯の手前のエリアで、この辺りの源泉は中の湯になる。
大扇別館には電磁風呂やら超音波風呂やらクアハウスのような設備がなんとなく怪しさを感じさせる男女別の内湯と、渓流沿いの混浴露天風呂がひとつある。別館と言うからには本館もあって、別館より少し下流側に本館がある。本館には男女別の内湯があるのみ。さらに湯川温泉より秋田寄りにある巣郷温泉にも高原旅館大扇という姉妹館があるらしい。
【旅館外観の印象】
大扇別館は道路から湯川を挟んで向こう側にある。大扇本館はこじんまりとした古びた旅館だったが、大扇別館は結構大きな旅館でなんだか押しの強い外観。
橋で分断された最上階から川に向かって土手沿いに階が這い下り、川を跨ぐ渡り廊下やらなにやら、ごちゃごちゃと増築を繰り返したような危うさが漂う。耐震改修促進法の改正を乗り切ることができるのか心配になるが、この混沌とした建物は好きだからなんとか乗り切って欲しいと思う。
道路沿いの駐車スペースから歩いて橋を渡ると、「大扇別館出入口」と書かれた看板のある通用口にしか見えない入口に戸惑う。営業中とも書かれているが、中はロビーではなく廊下が延びるだけ。恐る恐る声を掛けると返事があり、どうやら正しい出入口ではあるらしい。玄関らしい正面玄関というものが他にあるのかないのか、確かめてみれば良かったが忘れてしまった。入浴料は一人300円と今では少なくなった格安料金。
【川沿いにある混浴露天風呂】
混浴の露天風呂へは男女それぞれの内湯を通り抜けて出る。女性内湯は露天風呂のすぐ隣の最下階にあるが、男性内湯は露天風呂より一階上にある。男性内湯を突き抜けて外に出るとある階段を下りると、露天風呂の裏側から川から見て湯槽の左側に出る。
露天風呂の真ん中にはあまり目隠しの役には立たなそうな、それゆえ露天風呂の大きさ感を損なわない程度の仕切が付いている。女性内湯からは露天風呂の川から見て右側に出るので、男女を分ける心理的な障壁にはなるだろうと思う。目隠しにはならなくとも随分女性も混浴しやすく感じるのではなかろうか。
湯はうっすらと黄緑色に濁っている。川沿いにあるが湯に浸かると川は見えない。だが川音が聞こえるだけでも趣はある。湯温は熱湯好きには物足りないかもしれないが、自分にはとても入り易くて長湯もできるベストな温度。
露天風呂からは露天風呂以外の人工物は見えづらく、結構山深い感じが堪能できる。大扇別館のこのおおらかさの残る露天風呂といい、良い意味でいかがわしさ漂う内湯、そしてなによりカオスな旅館建物が、これはもうものすごく好みだ。
※閉館しました。