何年か前に、赤倉の上にある燕温泉に行った。
徒歩で行く、野湯(?)の河原の湯だ。私のお気に入りの場所でもある。
この日、私が狭っこい林道を温泉に向かって歩いていると、前からリュックを担いだ若い二人連れの女性が歩いてくる。「へー、登山ができるのか。もう温泉に入ってきたんかな。汗かいた後に露天風呂に入ったら、むちゃくちゃ気持ちいいだろうな。」なんて、すれ違いざまこの女性たちの入浴シーンを頭に思い描く不謹慎な私であった。そして、もうちょっと早く来れば一緒に入れたのに、としきりに残念がるただのエロじじぃと化していた。
温泉につくと、ツーリング途中らしい男性の先客が一人だけ。お湯は白濁していかにも気持ちよさそうだ。さあ入るぞ、と服を脱ごうとしたところ、なんだかがやがやと来た道の方から声がしてきた。おお、見ると先程の二人。 ん? おばさんが一人増えている。
脱衣小屋が一つしかないので女性陣に先に譲ったら、聞いてもいないのにおばさんが説明してくれた。どうやら私の後から温泉に向かっていたおばさんがこの二人とすれ違い、自分一人じゃ恥ずかしいから一緒に入ってくれと強引に誘ったらしい。
ナイスなおばちゃんである…。
思わぬ所で混浴を楽しむことになった。
お湯は、最高に気持ちがいい。川がすぐ近くを流れており、この温泉以外の人工物はいっさい視界に入ってこない。心が洗われるようだ。そして、何と言っても今回の入浴には花がある。
そうこうしているうちに徐々に入浴者が増えてきた。
先程のおばちゃんは、恥ずかしいから見ないでくれと言いながら、タオルも巻かず堂々と湯を出て行った。暫くして女性二人も、注意深くタオルを巻いて出て行った。もちろん出る瞬間、私はジッと見つめるような失礼なマネはしていない…と、思う。
湯舟の中はおやじだけになってしまい少し寂しくなったが、まあ良いひとときを過ごしたと思う。
と、私はふと脱衣小屋の方になにげなく、本当に何も考えずに目をやった。その瞬間…
イヨォッホレイッヒィ!!
私の脳みそがヨーデルを唄いながらカズダンスを踊った。
なんと、女性の一人がちゃんと身体にタオルを巻いていたのだが、自分の荷物を探るためにこちらに背を向けて前屈みになっていたのだ。当然湯船に浸かっている私の視線はかなり低い。つまり、私に向かって突きだしたお尻は丸見えで、いやそれどころか、女性の大切なあの部分までもが丸見えで…。ごめんなさい。見ようと思ってみた訳じゃないんだってば。
おそらく、間抜け面で数秒間見入ってしまっていたと思う。視線を下げると、ふと一人のおっちゃんと目があった。同じような驚きの目をして、私らは一瞬見つめあい、そして次に少年のような晴れ晴れした笑顔を交わした。その瞬間私らは、確かに同志であった。
…この日、私はとても幸せな気分で帰路についたことは言うまでもない。