ご存知の方も多いと思いますが、少し前に「不動の湯」の脇の林の中に足湯が地元の方々により作られました。足湯とは無論足だけを浴する所で、細長くて浅い箱状の足浴槽に「不動の湯」と同じお湯が引かれていて、訪れる人は、備え付けのベンチに座って靴・靴下を脱ぎズボンの裾を捲り足を浸して、景観と森林浴を伴ったリラクゼーションを満喫しています。特に、「不動の湯」への入浴を断念せざるを得なかった女性にとっては、服も脱がずに手軽にリラックスできるということで非常に好評のようです。
さて、その日は休日ということもあって「不動の湯」は男性で満員でした。私は躊躇して彼女と相談し、少しの間そばで様子を伺うことにしました。
しばらくすると、40代後半とおぼしきご夫婦が「不動の湯」を訪れました。しかし、やはり男性陣で大盛況の様子に私達と同様に尻込みしたらしく、ちょっと話し合った上で、その場を離れ足湯の方に向かっていきました。「やっぱりこの状態じゃ、女の人が服を脱ぐ気にはなれないわなー。」と私が思った次の瞬間です。足湯に着いたそのご夫婦の旦那さんの方が、おもむろに服を脱ぎ始めているのです。そしてそれに習ってか奥さんも!
私達や「不動の湯」の連中があっけに取られる中、2人は全裸になってあの細長くて浅い足浴槽の中に無理やり体をねじ込み横たわりました。そして2人は膝を突き合わすような体勢で満足気に談笑しているのです。どうやら2人とも痩せ型なので、あの浴槽がジャストフィットしている様子。この奇妙な光景にハイキングの通行人達も必死で失笑を堪えています。不動の湯の酔客が「そこは足湯だぞ」「棺桶に入っているみたいだぞ」と野次を飛ばしても、その声が届かないのか一向に出る気配はありません。2人は、温泉によっては存在する「寝湯」と勘違いしていたのでしょうか?ちゃんとそこには足湯であることも利用法も明記されているのですが・・・
ともあれ、私達にとってはこのエピソードは微笑ましい思い出となりました。だって、混雑した「不動の湯」で着衣のまま足だけ浸している人とかよりは、足湯に全裸で入っちゃうこのご夫婦の方がよっぽど微笑ましいですよね?