レポート | 日帰り
混浴露天
入浴時間が13時からだったが、清掃後のお湯が溜まればいいということで、少し待って早めに入れてもらった。親切な従業員である。
露天風呂は旅館を出て崖に添う長い通路を下った所にある。歩いていると、頭の上からぽたぽたと滴が垂れてきた。谷間にあるためにあまり日が射さないのだろう、崖の斜面はぐじゅぐじゅと湿っていて、いつ崩れてもおかしくないなと思わせる。
更衣室は小屋になっていて、男女別。湯船のすぐ手前にある。その外観から、トイレと間違えてしまった。着替える前に湯船を見てみる。ひょうたん型に岩で組まれた湯船だ。湯は薄茶色、鉄分の多そうな色合いであった。
小屋で衣服を脱ぎ、早速湯に浸かる。数時間前の薮漕ぎの無数の擦り傷に、湯がじんじんと染みて飛び上がりそうになった。違う意味の、「くぅ〜染みる!」であった。周りに目をやると、展望はあまり開けていない。谷底のような場所だから、それも仕方ない。
湯船の縁から身を乗り出して下を覗き込むと、谷底に清流が流れている。川底が青白く染まっていた。川にも硫黄分が含まれているのだろうか。湯を舐めてみたが、少し甘ったるい感じで、鉄臭さはなかった。硫黄臭もあまりないが、湯船の底といい脇といい錆色の成分が付着し、堆積している。
本で見たこの温泉の紹介写真には、真冬の凍てつく景色が載っていた。しかしこの日の印象は、じとじと湿った日の射さない少し侘しい印象であった。寒いかも知れないが、真冬の方が印象が良いかも知れない。このじゅくじゅく湿った崖がすべて凍りついた様を見てみたいものである。