渓流釣りが趣味で、あちこちの川に釣りに行きます。
あれはもう20年ほど前になるでしょうか、山形県の滑川温泉脇を流れる渓流に釣りに行ったときのことです。渓流釣りは、釣りのポイントを探ったり、右岸から左岸に移ったりと川に立ち入ることが多く、釣りをしたあとの冷えた体を暖めるのに近くに温泉があると、とてもありがたーいのです。基本的には温泉の流れ込む川、それも強酸性の湯の流れる川には魚はいないのですが、滑川温泉は温泉場を少し過ぎ行くと滝があり、そこからかなりの水量の水が流入していることと、湯の泉質のせいでしょう、そこそこいい釣りができるのです。
その日も岩魚を10尾ほど釣り上げ、さあ温泉に入って温まって帰ろうと、宿で入浴料を払い入浴することに。当時は上流から見て左側の川原に石積みの露天があり、たしか脱衣所はなかったように記憶してますが(あっても濡れて汚れた釣りのウェアを他の方も使う場所に脱ぎ捨てるのは失礼というものなので)露天の石積みの下において、よじ登る格好で湯船に。
「にいちゃーん、釣れたのかいなー」というおばちゃん達となごやかに談笑。「よかったら2,3匹持っていきます?」というと、「おぉ、岩魚は精がつくっちゅうからのぉ じいさんに食わせてやっかぁ」喜ばれてしまいます。
すっかり温まり、少し涼んでからまた石積みを降り、服を手にしようと屈みこんで見ると「!!」
石積みの湯船ではあるのですが、下のほうは大きく窪んでおり 高さは4,50センチ、奥行きもほぼ同じ、幅は3メートルほどの結構な広さのいわば洞窟的スペースがあり、その中に「ひも」のようなものがたくさん。それも動いている。
そこは実はマムシの巣で、温泉の熱で暖かいせいか互いに絡み合った子マムシたちがうじゃうじゃと。じつにおぞましき光景。しかも、服を取ろうと手を伸ばすと鉛筆ほどの太さになった子マムシの何匹かが、生意気にもカマ首を持ち上げシュッシュと威嚇してくるではないですか。木の枝があったので差し入れて見ると カプっと噛み付いてきます。面白がってからかってたら 奥のほうにでかい親マムシが何匹もいて、こちらに動いてきます。
石積みの段差からやや離れたところで服を脱ぎ、少し飛び上がるようにしてからよじ登ったからいいようなものの、もし窪みの近くに服を脱ぎ、よじ登る際に片足の先がその窪みに入っていたら・・今頃私、こんな記事書いてなかったでしょう。