レポート | 日帰り
赤倉温泉駅から温泉街までは2kmほど距離があり、駅のある国道から県道を南下して温泉街の入口まで徒歩だと30分前後かかることになる。三之亟は赤倉温泉の入口近く、県道を入ってすぐの所にある。田舎家風の建物だが古くはなく、旧館の持ち味をモチーフに建て直したのだろうと思われる。
【浴場設備と日帰り入浴料】
三之亟は部屋数29室あり、赤倉温泉の中では最大の旅館。三之亟の浴室は、通常は男女交代制で利用し貸切も可能な内湯の「ひょうたん風呂」、男女交代制の「露天風呂」、足下自噴泉の混浴「岩風呂」の三箇所だけとなる。岩風呂には18時〜21時半と比較的長い女性時間が設けられている。日帰り入浴料は一人500円。
【混浴岩風呂】
目当ては混浴なので真っ直ぐ岩風呂に向かうが、旅館は奥に長いのか廊下を随分歩いて辿り着いた。脱衣所は男女別にある。比較的新しめの内装で、混浴の脱衣所とは思えない綺麗な室内だ。脱衣所から引き戸を開けると混浴の浴室となる。脱衣所の引き戸は男女並んであるが、引き戸を出てすぐの所は衝立で目隠しがされていて、女性への配慮が感じられる。浴舎は天井が高く体育館のような大きな空間だった。三之亟のサイトで見ていた写真では、これほど大きな浴室とは全くわからなかったので驚いた。
建物などは改築したのだろうが、混浴の岩風呂はほぼ昔からそのままのようだ。コンクリの壁は古ぼけて年季が感じられる。脱衣所から浴室に入ってすぐ右側、湯槽より高い位置に洗い場が設けられているが、そちらはコンクリの壁が作られた年代よりずっと新しく、シャワーまで付いた設備。足下湧出の湯槽がふたつ並ぶ横には、室内では違和感のある大岩がそびえる。大岩に沿って回り込むように奥の階段を上がるとそこにも湯槽があり、打たせ湯が湯槽に落ちている。三つの湯槽は天然の巨岩をくり貫いて作られているのだそうだ。
下のふたつ並んだ湯槽の底からは湯がじわじわと湧出している。脱衣所から見て奥の湯槽が中湯、手前が深湯と名付けられている。三之亟の初代がツルハシで手掘りしたというそのままで、湯槽の底は平ではなく、深く抉れた箇所もある。中湯は最深110cm、深湯の最深は140cmもある。湯槽には排水溝がないため、昔は手作業で湯を掻き出して清掃したのだそう。岩盤から直接湯が湧出しているので湯を空にすることが難しい為の工夫で、湯槽の底を一部深くした湯かき穴がある。湯かき穴は数百年の間に自然に抉れを増したのだそうだ。現在では湯を掻き出すのは電動ポンプで行っている。
なかなか興味のつきない面白い風呂であったが、自分らが入って間もなく若い男性二人が入浴に来た。それでも広い浴室に湯槽が三つもあり、目線が気にならない程度に入り組んでもいるので、ツレもさほど気にせずいれたようだ。こちらが女連れであるゆえ、あちらも若者らしく遠慮して視界に入らないよう離れていてくれる。あまり馴れ馴れしく近寄られるのも勘弁ではあるが、とはいえ遠慮されまくるのも心苦しくもあり、自由にあれこれ湯槽を移動して楽しみたかろうと、自分らは早々に上がることにした。最初の数分間しか写真が撮れなかったのが若干心残りではあったが、三之亟にもいずれまた来る機会もあるだろう。
※現在、日帰り入浴は受け付けておりません。