レポート | 宿泊
峩々温泉は、蔵王山中の谷間に湧く一軒宿の温泉である。胃腸の名湯として知られている。日帰り入浴では男女別の露天風呂しか入れないため、混浴露天風呂を楽しみたいなら宿泊しなくてはならない。今回、スキーの滑り納めを兼ねて宿泊してきた。
蔵王エコーラインを峩々温泉方面に曲がり、凍りついた急な舗装路を下っていくと、やがて谷底にへばりつくように立っている峩々温泉の宿が見えてきた。想像していたより大きい。山奥の鄙びた一軒宿というイメージを持っていたのだが、みごとに覆された。部屋に案内されて入ってみると、立派な部屋だったのでこれも驚いた。天井が高く、広さも充分。なにせ掘り炬燵のある別室まで付いているのだ。全館床暖房。贅沢な作りである。
夕食前に、男女別の内湯に行ってみる。その日は風が強く、さすがに浴室内は寒かった。暗い浴室に、ぬる湯とあつ湯のふたつの浴槽がある。ぬる湯といっても充分暖まれるくらいの温度はあり、こちらの方が適温であった。大きなガラス張りで外がよく見渡せる。あつ湯は熱くてとても入れない。足をつけた瞬間、即座に入浴は断念してしまった。熱いの苦手。ここでは床に寝そべってお腹に湯を掛けるのが正しい入浴方なのである。湯船の脇にちゃんと枕木もこしらえてある。
峩々温泉の夕食はバラエティに富んだ、工夫を凝らしたものであった。美味しかったかと聞かれると?なものもあったが、素材からこだわっている料理である。ただ、もっと素朴でいいから、すげー美味い!っていうのを期待してしまうが。
夕食後一休みしてからいよいよ露天風呂に向かった。内湯を通り過ぎ、プレハブの廊下を進むと露天風呂だ。風が建物を飛ばしてしまいそうな位強く、浴衣1枚で来たらひどく寒かった。
露天風呂に出たら、寒風吹きさらしで死にそうに寒い。気合いで浴衣を脱ぎ、急いでお湯に入る。ひ〜っ!!ぬるいじゃないかぁ。体温と同じくらいの温度だろうか。殆ど水のようなものである。がたがた震えながら暖かい場所を探すと、一番奥の湯が流れ込んでいる場所がかろうじて他よりは暖かい。しかしとても耐えられるようなものじゃなく、15分程で断念して湯船を飛び出した。
濡れた身体に容赦なく寒風が吹きつけ、遭難する一歩手前である。浴衣もろくに羽織らず、なにやら訳のわからないことを叫びながら裸同然で内湯へ走る二人だった。
翌日の朝、凝りもせずまた露天風呂に行った。夕べの風は嘘のようにやみ、しんしんと雪が降っていた。恐る恐る湯の温度を確かめてみると、夕べより随分暖かい。喜んで湯に浸かった。少しぬるめではあるが、昨日に比べれば嘘のように快適である。おそらく、強い風のせいで湯がすっかり冷まされてしまったのだろう。風が止んだ今は、気持ち良く雪見の露天風呂を楽しむことが出来た。
朝食が済んだら、談話室にて無料でこだわりの水だしコーヒーがいただける。もちろん飲んでみたが、もともとコーヒーは好きなほうではないので、美味しいかどうかはわからなかった。蔵王山中にある峩々温泉だけに、樹氷シーズンには雪上車による樹氷ツアーを行っているらしいが、是非とも行ってみたいものだ。しかし、厳冬期にこの露天風呂はちょっときつそうかな。