この宿は、手前のかに湯・八丁の湯と比べ、尾瀬に行く人、金精峠から来た人と、多くの山男・山女が泊まる山小屋でした。そして、今も山小屋の雰囲気が残るところで私の好きな宿です。
この話はもう30年以上前の昭和の頃の話です。そのころは温泉ブームもなく、温泉に行ったというと年寄り臭いと馬鹿にされたものです。
日が暮れて露天風呂に入っていると、金精峠からの下りの道を光がちらちらと揺れ、「今頃、降りてきて大丈夫かい。無茶な計画したのでは」と、誰とはなく声が出て、男7・8人で露天風呂でのんびりとしていたときです。ガヤガヤと「恥ずかしい」、「無理だ」とおばさんの声がします。それに対し「大丈夫。大丈夫。」と答える声がします。
・・・で、突然、40前後のおばさんが5・6人、露天風呂に入ってきました。それは、まさに乱入という感じでした。それに対し、男はというと山男です。純情です。今ならば話しかけて世間話をするところですが、私を含め、恥ずかしさでさっさとお風呂から出て部屋に戻っていきました。