レポート | 宿泊
磐梯山麓温泉は、一軒宿の静楓亭が平成9年に開業した新しい温泉。元々温泉地でもなく周りに民家もないただの山林から温泉が掘り当てられ、その土地を購入して温泉宿を始めたのは千葉県出身のオーナー。地下1,000mから毎分400L出る豊富な湯量を生かして、大浴場を造らず全室に大浴場並の露天風呂を備えるという、オーナーの考える理想の温泉宿を具現化したのが静楓亭なのだそうだ。
11室しかない客室の露天風呂はおよそ8畳もの広さがあり、源泉を贅沢にかけ流している。1部屋が1日に消費する温泉の量はなんと20〜40トン。宿泊料だけ見れば高めであるが、部屋数と温泉量から考えれば他の高級旅館と比べて価格破壊レベルの破格値と言える。一般的レベルの客室露天風呂にすればいったい何部屋造れることか。
ちなみに平成20年の改築で露天風呂は8畳の広さになったが、それ以前は10畳もの広さだった。少し狭くしたのは冬場の安全性を確保するためだそうだ。
【宿泊料】
静楓亭の宿泊料は3種類に分かれている。一番安いのは食事の付かない素泊りで、平日2名1室一人あたり19,800円。最上級のプランは懐石料理プランで平日2名1室一人あたり38,800円。中間が和食料理プランで平日2名1室一人あたり26,800円。土休前日はどのプランも5,300円増しとなっている。
地図を見ると付近に食事処がありそうにないと思ったので、素泊りプランの料金は魅力だったけどやっぱり無難に和食プランを選んだ。実際に行ってみると想像通り、車でもかなり遠くに行かなければ食事する所はなさそう。旅館に泊まっておきながら冷えたコンビニ弁当じゃあ侘しいし、客室に露天風呂が付いてて寛ぎたいところ食事のためにわざわざ出かけるのも逆にもったいないから、食事付きプランにして正解だった。
【客室設備】
静楓亭の部屋の構造は全室同じで、和室10畳の寝室と和室12畳の居間、多機能マッサージチェアが置いてある板の間、そしてその窓の外に露天風呂がある。部屋全体に床暖房が入っているので、畳にごろりと寝転がっても暖かく気持ち良い。
食事は部屋出し。基本的に仲居さんは夕食と朝食の配膳の時しか顔を出さない。布団は最初から敷いてある。この露天風呂のために泊まりに来ているのだから、ちょくちょく仲井さんに来られてはおちおち入浴してられないので、邪魔をしないというサービスはありがたい。
部屋には立派な調度品などという物はなく、少々痛みも目立ち始めているごく普通の和風旅館的ではあるが、広さはもちろんのこと床暖房や防音二重構造など、見た目よりも空間そのものに贅を尽くすというか、贅沢の方向性が他とは違うと感じられる。
【客室露天風呂】
板の間から脱衣所を抜けるとまず内湯。露天風呂にばかり目がいってしまうが、内湯も一応ある。あるにはあるが、露天風呂に比べてとりあえず造っときました感は否めない。結局のところ、シャワーは使ったが湯槽に湯を溜めることはしなかった。
内湯奥の扉を開けると外で、露天風呂がある。客室専用とは思えない大きさの湯槽に、翡翠色の濁り湯がたっぷりと注ぎ込まれ、なみなみと満ちている。下手な貸切露天風呂よりよほど大きい。これを独占し気兼ねなくいつでも入れるのだから、温泉目当てにとっては他のどんなことより最高の贅沢と言える。
湯槽から見える景色は、だいぶ落葉してしまったものの広葉樹の赤と黄色、そして緑のコントラスト。湯の音と風の音、自分ら以外の物音は聞こえない。ひとつだけ残念だと思ったのは、やはり10畳の広さを体験してみたかったということだけ。改築前に来たかった。
ちんまりした風呂は嫌だけどツレと別々はつまらないから混浴に多く入るようになったけど、このレベルの客室露天風呂が増えれば、あるいは貸切風呂でも最低この大きさであれば、わざわざ気を遣う混浴に行くこともないかなと思える。ただまあ、混浴ということ以外の魅力もあるから、完全に混浴から離れることはないだろうけど。