レポート | 日帰り
小栗山には民宿が数軒あるが、温泉を持っているのはこの民宿文伍だけ。小栗山温泉を地図で探しても載っておらず、ナビで小栗山温泉と入力しても出てこなかった。
今でこそ行った人も増えたようでネットで検索すると多くの情報を見られるが、小栗山温泉をリストに加えた数年前は一部のマニアがサイトで紹介しているほんの数ページしか情報がない状態で、知る人ぞ知るといった感じの温泉だった。
そもそもが民宿文伍はオーナー主人が趣味の副業でやっているような民宿らしい。温泉もここの親父さんが掘り当てた。温泉を掘る時に周りにも声をかけたが相手にしてもらえなかったそうで、ゆえにこの辺りで温泉を利用できるのは民宿文伍の一軒のみとなったとのこと。
国道252号を玉梨八町温泉方面に向かって車を走らせると、道路の右側、一段低い場所に民宿文伍の看板が見つかる。車を停める場所があるか不安だったので、民宿文伍とは反対側に向かう分岐に入ってすぐの道路脇に作られた駐車スペースに停め、歩いて向かうことにした。
民宿文伍の外観はまるっきり民家そのもの。日帰り入浴料は300円と今どきでは珍しく安い。民宿文伍には男女別の内湯と混浴の露天風呂がひとつある。露天風呂は親父さんの手造りだそうだ。もともと建築会社の社長であった親父さんだからお手のものなのだろう。
露天風呂の脱衣所は簡素なもので、男女の区別はない。しかし湯船は大きいので、着替えさえ済ませれば女性でも比較的容易に混浴ができると思う。
この日は大粒の雪が降っていたが、雨の日などに備えて頭の上に帽子のように被る傘も用意されている。とはいっても肩や背中には雪が当たり放題なのでかなり冷たい思いをした。湯船が広いので湯の温度が心配だったが、それは杞憂で充分な温かさだった。
草木と雪で景観はないが、広い湯船のおかげで狭苦しさは全く感じない。湯は若干黄緑色に濁っている。
帰ろうと玄関を出た所で親父さんが出てきて源泉の場所など色々教えてくれた。ご主人のことを親父さんと書いてきたが、とても人懐っこく話し好きな人で、親父さんという言い方が一番しっくりする。最近テレビだか雑誌だかの取材が来たそうで、「あんま有名になると忙しくなってのんびりできないから嫌だなあ」と満面の笑みで話していたのが印象的だった。いやいや親父さん、ものすごく嬉しそうですぜ。