一年程前の話だが、老舗旅館でもあるこの金具屋旅館の「高砂」という部屋に投宿した。歴史を刻み込んだ建築は、素人目にもその価値を感じることができ、文化財としても登録されていることも頷ける。
しかし実際に宿泊してみると、老朽化という言葉が当てはまる箇所がそこかしこにあるのも事実。また一方で、建具の痛みや擦り切れた唐紙のなどは目を瞑るとしても、磨り減った畳みや部屋の隅に堆積した埃は頂けない。
高級割烹旅館ではないから致し方ないとは思うのだが、品数に特化しただけの料理も私には…。本当に美味くまた心がこもった料理であれば、品数は少なくとも、また豪華に見えない素朴な田舎料理でも大きな満足度を得ることができるのだが。
館内にいくつもあり、予約不要の貸切風呂は非常に素晴らしいと思う。また異なった源泉を有しているために効能が異なることも大きなアドバンテージかもしれない。
インターネットを活用した予約を積極的に取り入れているようだが、老舗旅館の新しい試みとしては評価したい。ただ、折角足を運んでくれた客が「心から満足できるような宿」にしていくことを同時進行させて、リピーターを作っていくことも必須かと思う。